PCB基板とは、ほぼすべての電子製品の内部にある平らな板のことで、PCB は printed circuit board(プリント基板)の略です。基板は部品を保持し、それらを銅でつなぎます。「PCB基板」という呼び方は、PCB の B がすでに board(基板)を表すため「基板」を重ねた表現ですが、日常的に広く使われています。本稿では、基板が何でできているか、主な種類、ベア基板と実装済みの基板および半導体チップとの違い、そして最初の特許から今日タイで製造されている基板に至るまで、この技術がどのように発展してきたかを整理します。
要点
- プリント基板は、銅の導体を使って部品間を電気的に接続するアセンブリです。[1] 大半の基板は、ガラス繊維で強化したエポキシ積層板である FR-4 を基材としています。[3]
- 基板には、銅層が 1 層の片面基板から、両面基板や多層基板までがあり[2]、高密度の設計や屈曲を伴う設計には、HDI 基板、フレキシブル基板、リジッドフレキ基板が用いられます。[6][7]
- ベア基板に部品をはんだ付けすると、PCBA になります。[5] 半導体チップは別の製品で、単一のシリコン片の上に形成された完全な回路です。[8]
- プリント基板の考え方は、Albert Hanson(アルバート・ハンソン)が 1903 年に出願した英国特許にさかのぼります。[9] Paul Eisler(ポール・アイスラー)は 1942 年にプリント回路を使ったラジオを製作し[12]、プリント回路は 1945 年初めに電波式近接信管で量産に導入されました。[13]
- タイは 2025 年に 50.6 億米ドルの基板を生産し、世界の生産額の約 5.4% を占めました。[22] 同国の上場基板メーカーの 1 社である KCE Electronics は、1982 年に設立されました。[20]
プリント基板 (PCB) とは
プリント基板は、銅の導体を使って部品間の電気的な接続をつくる電子アセンブリです。[1] 1 枚の基板が 2 つの役割を同時に果たします。すべての部品を決まった位置に固定することと、銅の配線によって信号と電力を部品から部品へ伝えることです。プリント基板が登場する前は、こうした接続を 1 本ずつの電線で行っていました。プリント基板は、同じ接続パターンを、繰り返し同じように製造できる 1 つの部品で実現します。
なお、PCB という同じ 3 文字は、回路基板とは関係のない工業用化学物質群であるポリ塩化ビフェニル(polychlorinated biphenyls)の略称でもあります。
PCB基板の構造図:各部の名称
図は 4 層基板の断面を示しています。番号 1 と 2 は基板の実装時に加わる部分で、番号 3 から 11 は PCB 工場が納入するベア基板を構成する部分です。
実装工程で加わるもの(PCBA)
- 1部品:図では表面実装の抵抗器で、その右に挿入実装部品がある。部品は実装工程で取り付けられる。
- 2はんだ接合部:部品をパッドに固定し、電流を流す金属。
ベア基板(PCB)
- 3パッド:部品をはんだ付けする露出した銅の部分。ENIG や HASL などの表面処理が施される。
- 4配線(トレース):パッド間で信号や電源を伝える銅の線。
- 5ソルダーレジスト:多くは緑色の保護膜で、パッド以外の銅をすべて覆う。
- 6シルク印刷:R1 や U1 のように部品を示す文字や外形線。
- 7スルーホール:内壁を銅めっきした穴。部品のリードを通してはんだ付けする。
- 8ビア:銅層どうしをつなぐ小さなめっき穴で、部品は挿入しない。
- 9プリプレグ:樹脂を含浸させたガラスクロス。層どうしを接着し、絶縁する。
- 10内層銅:多層基板の内部に埋め込まれた回路やグランド面。
- 11コア:硬化済みの積層板で、多くは FR-4(ガラスエポキシ)。基板に強度を与える。
基板を構成する材料
大半の基板は FR-4 から作られます。FR-4 はガラス繊維で強化したエポキシ積層板で、絶縁耐力が高く、UL 94 V-0 の難燃性グレードを持ち、重量に対する強度にも優れています。[3] その表面の銅箔をエッチングして回路を形成します。多層基板は積層によって作られ、銅箔、プリプレグ、内層コアを、温度と圧力を管理しながら接着します。[4] 仕上げとして、基板をソルダーレジストで覆い、露出したパッドに表面処理を施し、シルク印刷で文字や記号を入れます。[4]
| 層 | 材料 | 役割 |
|---|---|---|
| コア材 | FR-4 ガラスエポキシ積層板 | 基板に強度を与え、銅層どうしを絶縁する |
| 銅 | 銅箔 | 配線、パッド、プレーンとして信号と電力を伝える |
| プリプレグ | 樹脂を含浸させたガラスクロス | 多層基板の各層を接着する |
| ソルダーレジスト | ポリマーの被膜(通常は緑色) | 銅を保護し、はんだブリッジを防ぐ |
| 表面処理 | ENIG、HASL、OSP など | 露出したパッドのはんだ付け性を保つ |
| シルク印刷 | 印刷インク | 部品番号と外形を表示する |
プリント基板の主な種類
基板はまず、銅層の数によって分類されます。片面基板は銅層が 1 層で、両面基板は 1 枚の基材の両面に銅層を持ち、多層基板は複数の銅層を積み重ねたものです。[2]
| 種類 | 構造 |
|---|---|
| 片面基板 | 基材の片面に銅層が 1 層ある |
| 両面基板 | 1 層の基材の両面に銅層がある |
| 多層基板 | 3 層以上の銅層を積層して 1 枚の基板にする |
| HDI(高密度相互接続)基板 | 高密度の設計向けに、微細な配線と、レーザーであけたマイクロビアを用いる |
| フレキシブル基板とリジッドフレキ基板 | 曲げられるポリイミドフィルムを、単独で、またはリジッド部どうしをつなぐ形で用いる |
高密度相互接続 (HDI) 基板は、薄い絶縁層にレーザーであけた微小な穴であるマイクロビアによって層間を接続します。[6] リジッドフレキ基板では、1 枚以上の柔軟なポリイミドフィルムを構造全体にプレスで組み込んでリジッド部どうしをつなぐため、基板を折り曲げて狭い空間に収めることができます。[7]
PCB、PCBA、半導体チップの違い
ベア基板とは、部品を 1 つも搭載していないプリント基板のことです。PCB 実装とは、必要なすべての部品を基板に搭載する工程であり[5]、その結果できたものを PCBA(printed circuit board assembly、部品を実装したプリント基板)と呼びます。半導体チップはさらに別のもので、単一のシリコンチップ上に形成された完全な電気回路です。[8] チップはパッケージに収められたうえで、基板にはんだ付けされます。PCB 材料に関する MPBxChange の記事では、プリント基板と半導体チップを並べて図示しています。
基板の製造工程
一般的な多層基板は、次の工程を経て製造されます。[4]
- 各内層の回路パターンを銅張積層板に露光で形成し、不要な銅をエッチングで除去します。
- 内層をプリプレグおよび銅箔と重ね、熱と圧力をかけて積層します。
- 穴をあけ、層間を接続するために穴の内壁を銅でめっきします。
- 外層の回路パターンを露光で形成し、めっきとエッチングを行います。
- ソルダーレジスト、表面処理、シルク印刷を施します。
- 1 枚ごとに電気的な試験と検査を行います。
これらの各工程で買い手が工場に求めることのできる記録は、PCB 工場に何を求めるかにまとめています。
プリント基板の歴史
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1903 年 | Albert Hanson が、紙の絶縁層の上に保持したケーブル導体について英国で特許を出願 |
| 1925 年 | Charles Ducas(チャールズ・デュカス)が、支持面に導電性の回路パターンを印刷する方法で特許を取得 |
| 1936 年から 1942 年 | Paul Eisler がロンドンでプリント回路の実験を行い、それを用いたラジオを製作 |
| 1945 年 | プリント回路が電波式近接信管で量産に導入される |
| 1949 年から 1956 年 | 米陸軍通信隊の「Auto-sembly」工法。1956 年に特許を取得 |
| 1953 年 | めっきスルーホールを持つ基板が開発される |
| 1963 年 | 特許が、めっきスルーホールで層間を接続した多層基板を記載 |
| 1984 年から 1991 年 | レーザー穴あけによる HDI 基板が米国と日本で生産に入る |
| 1994 年 | 出荷されたパッケージ済みチップの約 75% を表面実装が占める |
1903 年に出願された Albert Hanson の英国特許は、裸のまま、または薄くワニスを塗った導体を、紙などの絶縁材料の層の上に保持する構造を記載しています。[9] 1925 年には Charles Ducas が、支持面に導電層を電気回路の形に印刷する方法の特許を取得しました。[10]
オーストリアからロンドンに逃れた亡命者である Paul Eisler は、1936 年に始めた実験を経て、1942 年にプリント回路を用いたラジオを製作しました。[12] 1948 年に付与された Eisler の米国特許は、印刷を基礎とする工程によって、金属の導体を絶縁性の支持体の上の所定の位置に形成する方法を対象としています。[11] 米国国立標準局が 1947 年にまとめた報告書には、プリント回路が 1945 年初めに、同局が開発した迫撃砲弾用の電波式近接信管で量産に導入されたと記録されています。[13]
戦後の 1949 年、米陸軍通信隊の 2 人の科学者 Moe Abramson(モー・エイブラムソン)と Stanislaus Danko(スタニスラウス・ダンコ)は、部品のリード線を通す穴を基板に打ち抜く「Auto-sembly」工法を開発しました。[14] 1956 年に付与された 2 人の特許では、基板のパターン面をはんだ槽に浸し、すべての部品を一度にはんだ付けします。[15] Dataquest の 1993 年の報告書は、めっきスルーホールを持つ基板の登場を、回路の手配線に取って代わった 1953 年としています。[16] 1960 年代初めには、導体を設けた絶縁シートを積み重ね、連続してめっきしたスルーホールで接続した多層基板が、特許に記載されるようになっていました。[17]
その後の 2 つの変化が、今日の基板の姿を形づくりました。表面実装技術は部品を基板の表面に搭載する技術で、1994 年には出荷されたパッケージ済みチップの約 75% を占め、スルーホール実装は 17% でした。[18] レーザーであけたマイクロビアを持つ高密度基板は、1984 年に Hewlett-Packard のコンピューター用基板で、1991 年には日本で Surface Laminar Circuits として登場しました。[19]
タイのプリント基板製造
タイでの基板製造は、少なくとも 1980 年代にさかのぼります。KCE Electronics は 1982 年 11 月 5 日に設立され、1988 年 8 月にタイ証券取引所に上場しました。[20] Fujikura のプリント基板事業は、1988 年にナワナコンにタイ工場を設立しました。[21]
産業の成長が最も速いのは近年です。台湾プリント回路協会 (TPCA) は、2025 年のタイの PCB 生産額を 50.6 億米ドルとしており、これは前年比 22.4% 増で、世界の生産額の約 5.4% にあたります。[22] MPBxChange の工場登録簿にはタイの PCB 工場が 39 か所掲載されており、そのうち 33 か所が操業中または量産立ち上げ中です。各工場の所有者、立地、今後の計画については、タイの PCB 生産拠点の拡大で取り上げています。
データと手法
本稿は、2026 年 10 月 15 日に参照した公開資料に基づいています。対象は、Google Patents の特許記録、博物館とアーカイブの所蔵資料、1947 年の米国政府の報告書、アーカイブに保存された Dataquest の市場報告書、企業の投資家向けページ、PCB メーカーの技術解説ページ、業界紙です。年月日は各出典が示すとおりです。戦時中の信管について出典によって記述が異なる箇所では、1947 年の米国国立標準局の報告書の表現に従っています。基板の断面図は MPBxChange が作成した模式図であり、各部の比率は説明のためのものです。
出典
資料名と引用文は、出典の原文の言語のまま掲載しています。
- 企業 Zachariah Peterson (2020). What is a PCB and Intro to PCB Design. Altium. 本文に戻る
- 企業 The Sierra Circuits Team (2019). What is a PCB?. Sierra Circuits. 本文に戻る
- 企業 Milan Yogendrappa (2021). Why FR4 Material is Commonly used in PCB Fabrication?. Sierra Circuits. 本文に戻る
- 企業 Sierra Circuits (2025). PCB Manufacturing Process. Sierra Circuits. 本文に戻る
- 企業 Sierra Circuits (2021). PCB Assembly Process. Sierra Circuits. 本文に戻る
- 企業 Würth Elektronik (2026). HDI Microvia PCBs. Würth Elektronik eiSos GmbH & Co. KG (we-online.com). 本文に戻る
- 企業 Würth Elektronik (2026). RIGID.flex PCB solutions. Würth Elektronik eiSos GmbH & Co. KG (we-online.com). 本文に戻る
- 学術 Computer History Museum (2026). 1959: Practical Monolithic Integrated Circuit Concept Patented. Computer History Museum (The Silicon Engine). 本文に戻る
- 公的機関 Albert Parker Hanson (1903). Improvements in or connected with Electric Cables and the Jointing of the same (GB190304681A). Google Patents. 本文に戻る
- 公的機関 Charles Ducas (1925). Electrical apparatus and method of manufacturing the same (US1563731A). Google Patents. 本文に戻る
- 公的機関 Paul Eisler (1948). Manufacture of electric circuit components (US2441960A). Google Patents. 本文に戻る
- 学術 Science Museum Group (2026). Radio set containing original printed circuit boards. Science Museum Group Collection. 本文に戻る
- 公的機関 Cledo Brunetti and Roger W. Curtis (1947). Printed Circuit Techniques (National Bureau of Standards Circular 468). National Bureau of Standards, US Department of Commerce (hosted by NIST). 本文に戻る
- 公的機関 Susan Thompson, CECOM Command Historian (2026). Historical Innovations pave the way for current microelectronic mission at CECOM. U.S. Army (army.mil). 本文に戻る
- 公的機関 Moe Abramson and Stanislaus F. Danko (1956). Process of assembling electrical circuits (US2756485A). Google Patents. 本文に戻る
- データ Dataquest Incorporated (1993). Integrated Circuit Packaging Trends Focus Report. Dataquest (archived by the Computer History Museum). 本文に戻る
- 公的機関 Donald E. Bedson, Salvatore A. Di Nuzzo and Anthony C. Suleski (Hazeltine Research, Inc.) (1963). Multiplanar printed circuits and methods for their manufacture (US3102213A). Google Patents. 本文に戻る
- データ Dataquest Incorporated (1995). Integrated Circuit Packaging Focus Report. Dataquest (archived by the Computer History Museum). 本文に戻る
- 企業 Happy Holden (2019). Get to Know Microvia Manufacturing Processes and HDI Substrates. Altium. 本文に戻る
- 企業 KCE Electronics Public Company Limited (2026). Company's Business. KCE Electronics (investor relations website). 本文に戻る
- 企業 Fujikura Printed Circuits Ltd. (2023). History | Corporate information for Fujikura Printed Circuits Ltd.. Fujikura Printed Circuits Ltd.. 本文に戻る
- データ TPCA (Taiwan Printed Circuit Association) (2026). AI, Geopolitics Drive Southeast Asia's High-End PCB Ecosystem. I-Connect007 (IPC Publishing Group Inc.). 本文に戻る
引用方法: MPBxChange (2026). PCB基板とは:プリント基板の構造・種類・歴史. MPBxChange 調査レポート. https://www.mpbxchange.com/ja/research/what-is-a-pcb-board-printed-circuit-board-history
